光のあり方をテーマとし、室内に居ながらも自然の移ろいを感じ、意識が周辺環境に拡がっていくような空間となることを意図し計画を進めた。
クライアントからはセキュリティへの配慮から外部への開口部をある程度限定すること、壁が多く静謐な空間とすること、また周辺の風景に特徴的な田と田を分かつ「畦」がつくる線のイメージをモチーフとしてデザインに取り込むことが要望としてあった。
西から東へ向け窄まる細長い敷地の中に暮らしの工程をトレースするように各部屋を並列させ、シンプルだが機能的なプランとした。また拡散光に満ち明るく大きな空間と寸法を抑えた翳る空間を交互に連ね、明暗の繰り返しが小さな敷地の中に距離感を生むように開口部のあり方を検討していった。
吹抜の階段ホールはこの家の中心であり器楽練習のためのホールともなる。残響時間を調整する木製ルーバーの隙間からこぼれ落ちるトップライトの光が壁面に軌跡を描く。夏至の正午、ちょうど周辺で田植えが始まる時期、光が描く軌跡が壁面の角にタッチする。
障子を通過する潤んだ光、トップライトから差す光、西面の水田に反射して入る夕刻の光など、多様な開口部が季節や時刻に応じてその場所にしかない光にかたちを与える。環境の変化に呼応して静かに息づくような建築となった。
COLLABORATOR
設計・監理/竹下和宏建築設計事務所
構造検討/シマムラ建築工房 島村鐵二
照明計画/LIM LIGHTING DESIGN 吉村美子
設備設計/アイビィー設備設計事務所 平井孝典
施 工/株式会社 あらい建設
造作家具・キッチン・ソファ/KUUSI DESIGN 三島久幸