看護学校として利用されてきた築40年の校舎をリノヴェーション、学生たちにとって心地よく過ごせる居場所となり、交流や協働を通して創造的な関係性が生まれる場所を目指し、計画を進めた。
学生ラウンジ、ラーニングコモンズ、ボランティアセンター、防災施設、イベントホールの各機能を5層のフロアに配置。中廊下の両脇に教室が整然と並ぶ旧来型の講義棟に対し、不要な要素を削っていく方針で改修。骨格が露わになったラフな空間の中に、古い書架や什器、黒板の撤去跡などかつての記憶が散りばめられることで、新鮮な視点でこの場所の時間が感じられる空間とした。
学生ラウンジ KIUB cafeは本施設の中心であり、学生たちの主たる居場所となるフロア。
間仕切りを解体してできた500㎡のワンルーム中央に、シェアキッチンや映像ライブラリー等、様々な機能を集約したセンターコアを配置。外周にソファラウンジ・カフェ・ライブラリー・学生組織のワークスペースを緩やかにゾーニングした。各機能がシームレスに連続しながら、どこからでもセンターコアに集う学生たちの動きが感じられる構成となっている。
センターコアはシェアキッチンとして自由に利用できる調理設備を備えるほか、交流会や学祭、経営学部の模擬店授業など、カフェイベント時に中心的な場となるよう、様々な角度からサービスが可能なものとしてデザインした。学生たちが主体的に場をつくり、アクティビティが生まれる。
ソファ席や窓際のカウンター席、ビッグテーブル等、ゾーンの性格に合わせてデザインした製作家具を多用し、視点の変化と過ごし方のヴァリエーションを用意した。
ベンチ席背面のアートパネルは組替え可能なグリッドパネルとし、今後学生の制作物が織り込まれていくことで、時代を刻印しながら進化していくモニュメントとなる。
レストルームは背面がパウダースペースとして機能するアイランド型の洗面カウンターや、複数のヴァリエーションを設けた個室ブース等、空間的な構成を工夫し、明るく快適な場所とした。
学びの中心となるラーニングフロアは、平面の半分を解体したがらんどうのラーニングコモンズと、既存の教室をそのまま残したプロジェクトルームが隣接する配置。不透明であった間仕切を改造したガラススクリーンを介して互いの活動が垣間見える構成とした。可変テーブルで自ら場づくりし2つのゾーンを行き来することで、多人数~小規模グループワークまで多様な学びのプログラムを試みることが可能である。
ボランティアセンターは貧困家庭への食糧支援など学生が主体となって地域の課題に取り組む場である。共用部からの視覚的な連続性を意識し、ボランティアコーディネーターや学生スタッフが活動する姿が来訪者から垣間見えることで、共感や新たな協働が生まれるきっかけとなることを意図した。
訪れる人たちが関わる余地を残した未完成のデザインで、今後は学内・外を結ぶ接点としても場所が育っていくことを期待している。
CREDIT
建築主/学校法人 順正学園
設計・監理/竹下和宏建築設計事務所
施工/株式会社 蜂谷工業
構造・規模/RC造 一部鉄骨造 5階建 (改修)
延床面積/2,399.58㎡
COLLABORATOR
照明計画 LIM LIGHTING DESIGN/吉村美子
製作家具 KUUSI DESIGN/三島久幸
アートパネル・施設ロゴデザイン EDGE GRAPHICS/秋岡寛子
撮影/劒持方人